児童養護施設を巣立つ若者への支援

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 平成28年第4回定例会の一般質問で、
「児童養護施設を巣立つ若者への支援」を取り上げました。 以下に、質問と答弁を掲載します。
よかったら読んでください。

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平成28年11月17日 一般質問
児童養護施設を巣立つ若者への支援
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 児童養護施設を巣立つ若者への支援について質問いたします。
 保護者がいない子供や虐待を受けた子供など、さまざまな事情で家庭で暮らすことができない子供のための児童養護施設は、現在杉並区に5カ所あります。これは23区で最も多い施設数です。児童養護施設に入所できるのは原則として18歳までであり、退所後は就職したり大学などに進学します。その際、多くの退所者は、家庭の援助が受けられないため、精神的にも経済的にも大変な苦労を経験すると言われています。

 精神的なサポートという意味では、施設長や施設の職員がさまざまな相談に乗ることはもちろん、国の制度であるファミリーソーシャルワーカーや都の制度である自立支援コーディネーターが、退所者のアフターケアも行っています。

 経済的な面では、国や都の制度として、当面必要なものの現物支給や支度金の支給、住居の借り上げ費などの支援があります。また、大学、短大に進学する場合には、納入金の支援が受けられます。しかし、これらは全て1回限りの支給なのです。その後は経済的に自立して生きていく必要があります。家庭からの支援が一切なく、働きながら大学に通うということは、並大抵のことではありません。一定期間は継続的な支援が必要なのではないでしょうか。

 まずは、都内で最も多い5カ所の児童養護施設を擁する杉並区として、施設を巣立った若者への継続的なサポートをどのように行っているのか、現状を伺います。

 東京都の平成23年の調査では、過去10年間の児童養護施設の退所者のうち、最終学歴が大学、短大、専門学校卒業の人は15.1%となっています。全体の統計データと比べて非常に低い数字です。

 この大きな理由としては、最初から進学を諦めて就職する人が多いことは想像にかたくありません。また、進学したとしても、途中で諦めてしまう人も多い。東京都の調査では、21.3%が中途退学しています。中途退学の最も多い理由は、アルバイトなどの両立ができなかったというものです。勉強が嫌になってやめたわけではありません。せっかく進学したのに、生活のために学問を諦めざるを得ないというのは、どれほど無念なことでしょうか。

 もちろん、最終的には自立することが目的なのですから、退所後いつまでも支援を続けるわけにはいきません。しかし、だからといって、退所者以外の人と進学率や最終学歴等で大きな格差がある実態を放置しておいてよいはずもありません。杉並区としても、退所後の状況を継続的に調査し、実態を丁寧に把握した上で対応策を考えていく必要があると考えます。対象者の実態調査についてどの程度行っているのか、また、今後行う予定があるのか伺います。

 世田谷区では今年度から区の独自事業として、児童養護施設の退所者を対象に、区営住宅を月額1万円で貸し出す制度を始めました。就職した人は2年間、大学等に進学した人は卒業まで、区営住宅の旧管理人室を活用して、二、三人で共同生活する形態で、現在は3つの居住室に計5名が入居しているそうです。

 杉並区においても区営住宅は大変な人気で、高い倍率の抽せんに当たらなければ入居できません。しかし、障害者や高齢者に枠があるように、児童養護施設の退所者に対しても、特別の枠をつくることができないでしょうか。あるいは管理人室を改装して使っている世田谷区のように、ほかの利用者が競合しない工夫ができないでしょうか。児童養護施設を巣立った若者に対して、区営住宅を活用して住居支援を行うことについて、区のお考えを伺います。

 世田谷区は今年度から区独自の給付型奨学金も創設しました。大学等に進学した退所者に対して、年36万円を上限として卒業まで支給します。これらの経済的な支援に加えて、多世代の地域交流を通した居場所づくり事業を区内2カ所で毎月行っています。施設を出た若者に対しては、民間の基金による奨学金もあるからよいではないか、そう思う方もいらっしゃるかもしれませんが、金利の低下によって給付を引き下げざるを得ないなど、厳しい状況になっているのです。施設を出た若者が働きながら学校に行き、家賃も生活費も学費も払うという状況を考えると、年36万円の奨学金というのは大きな支えになるはずです。

 杉並区でも区の事業として、大学等に進学した退所者を対象に、給付型奨学金を創設してはどうかと考えますが、いかがでしょうか、区の見解を伺います。

 児童養護施設の退所者に対する住居支援や奨学金の創設は、世田谷区の事業が都内初ですが、住居支援、奨学金、居場所づくりという独自事業全体で、今年度予算はおよそ2,300万円だそうです。そこまで膨大な予算が必要な事業ではないのです。区が負担する費用に比べて、大きなメリットがある事業だと言えるのではないでしょうか。

 そこで、杉並区がこうした事業を行う場合の財源として、ふるさと納税を活用することを提案いたします。

 さきの議会において、区から、ふるさと納税については、来年4月から本格的に実施していくと答弁がありました。私もそれはすばらしいことだと思いますので、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思います。しかし、寄附の使い道を細分化すること、返礼品を送ること、クレジットカード納付を可能にすることなどは、既に全国の自治体がやっています。これらが実現してもスタートラインにすぎません。全国数ある自治体の中からどうやって寄附先として選んでもらえるようにするかは、これからの課題です。

 墨田区では、すみだ北斎美術館の開館資金として、5億円を目標にふるさと納税を募りました。そのウエブサイトを見ると、お礼の品が170種類も並んでおり、すごい迫力です。何としても目標を達成するという気合いのほどがうかがえます。そして、ことし10月に見事目標の5億円を達成したとのことです。

 数ある自治体から選んでもらうためには、寄附する人の心に響くものが必要です。おいしい牛肉もその1つですが、墨田区のように、何としても美術館のために5億円集めるという気迫が伝われば、それでもいいわけです。杉並区でも、施設を巣立った若者たちに何としても幸せになってほしいという気持ちがあれば、必ずや伝わるはずです。特に区民を対象としてふるさと納税を呼びかけるならば、こうした目標はぴったりではないでしょうか。児童養護施設の退所者支援のため、例えば1億円などと目標額を決めて、ふるさと納税を集めてはどうかと考えますが、いかがでしょうか、区の見解をお尋ねして、次の質問に移ります。

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区の答弁
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◎総務部長(関谷隆)
 ふるさと納税については、主として区外の方を中心とした制度設計ということで現在検討中でございます。

 また、墨田区の北斎館のような事例はございますけれども、その区に特化した施設に着目して寄附を集めるということでございますので、児童養護施設のような普遍性のある施設についての集め方として妥当かどうかということは考えていく必要があるかと思いますので、1つの参考とさせていただきたいと思います。私からは以上です。

◎子ども家庭担当部長(田部井伸子)
 私からは、児童養護施設を巣立った若者への支援に関する一連の御質問にお答えいたします。 現在、児童養護施設退所者に対しては、各施設に配置されている自立支援コーディネーターが退所前から支援計画を作成し、東京都の事業を活用した就業支援や住まいの確保支援などを行っております。こうした中で、区が連携してこれまで生活保護につないだ例もございます。

 次に、退所者の状況の把握に関するお尋ねでございますが、区としては、平成22年度に東京都が行ったアンケート調査や、児童養護施設からの聞き取りなどによりまして状況を把握しているところでございます。児童養護施設は、家庭復帰の場合は退所後5年、自立の場合は退所後10年、都に定期的に状況を報告することとなっておりますので、区内にある5カ所の児童養護施設及び児童相談所との定期的な懇談会などを通じまして、今後も退所者の状況の把握をしてまいります。

 住宅支援についてでございますが、昨年度行いました杉並区総合的な住まいのあり方に関する審議会の答申でも、児童養護施設退所者も住宅確保要配慮者として位置づけられておりまして、今後、居住支援協議会の中で住宅支援のあり方について協議してまいります。

 続いて、大学等への進学者を対象とした給付型奨学金制度に関する御質問でございますが、現在、国において、御指摘の児童養護施設の退所者も対象とした制度を創設するための検討が進められておりますので、区といたしましては、その動向を注視することとし、現時点で区独自に導入する考えはございません。

 今後も、児童養護施設退所者を対象とした支援につきましては、既存の支援事業の活用を中心に行っていく考えでございますが、実情に合った支援が届くよう、児童養護施設との連携強化を図ってまいります。私からは以上です。


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